Wnnのフロントエンドとしては、NEmacs上のたまご、またはMule上のたかな版 たまごを前提とします。このほか、uumやkinput2、xwnmo等でも利用は可能と 思いますが、フロントエンド側の設定についてはそれぞれのマニュアルをご覧 下さい。
インストールの手順は、大きくシステム辞書としてイン ストールする場合と個人辞書としてインストールする場 合とにわかれます。
Wnn用のパッケージchibutsu.tar.gzの中には
INSTALL | インストールのやり方に関する簡単な説明 |
Makefile | 辞書作成用Makefile |
chibutsu.u | 辞書に変換されるテキスト |
eggrc.tmpl | 個人用辞書として使う場合の .eggrc の雛形 |
eggrc-v4.tmpl | NEmacsの eggrc-v4(システム用) の雛形 |
eggrc-wnn.tmpl | Mule(Ver2以降)の eggrc-wnn(システム用)の雛形 |
version | バージョン情報 |
の各ファイルが含まれています。
システム辞書として組み込む場合は、当然ながら管理者権限が必要です。もし 権限がない場合は、管理人さんと相談して導入してもらうか、個人辞書として導入することで我慢してください。
以下の記述では、WnnがインストールされているディレクトリをWNNDIR、 NEmacsがインストールされているディレクトリをNEMACSDIR、Muleがインストー ルされているディレクトリをMULEDIRと表記します。それぞれの典型的なパス は、WNNDIRが/usr/local/lib/wnn、NEMACSDIRが/usr/local/lib/nemacs、 MULEDIRが/usr/local/lib/mule/19.xx (xxはマイナーバージョン番号)です。
Wnnのシステム辞書はWNNDIR/ja_JP/dic以下に適当なディレクトリを作成して 置かれるのが標準的です。Wnn4やFreeWnnでは標準的なシステム辞書として pubdicの下にいくつかの辞書がインストールされていることと思います。また、 Wnn6ではiwanami以下にシステム辞書が置かれているでしょう。地球物理辞書 はこのような分類とは別の辞書ですから、別のディレクトリに置く方がすっき りしていると思います。もちろん、管理の都合等で、既存のディレクトリの下 に置いても動作等にまったく影響はありません。
以下の説明では、aicというディレクトリを作成して、その下に置くことを想 定しています。自分で決めたディレクトリに辞書を置く場合は、aicとある部 分を適宜読み替えてください。なお、ディレクトリ自体は辞書の作成時に自動 的に生成しますので、この時点でディレクトリを準備する必要はありません。
jserverがロードしている辞書しか変換に利用できないかな漢字変換システム のために、辞書を前もってロードさせる設定をします。 WNNDIR/ja_JP/jserverrcに、地物辞書のためのエントリを加えます。具体的に は、
readfile pubdic/kihon.dic readfile pubdic/jinmei.dic
と並んでいるエントリの最後に、
readfile aic/chibutsu.dic
と書き加えてください。
NEmacs/Muleの漢字変換のためのシステム(たまご)の初期設定ファイルを変更 します。ここで行なう設定は個人のホームディレクトリに .eggrc があれば、 そちらが優先されるので、持っているユーザがいれば、新しい辞書を導入した ことを告知する必要があります。
NEmacsとMuleでは、使っている たまごのバージョンが異なるため、設定ファイルの記述法が異なります。
デフォルトで入っているシステム辞書の設定では複数のディレクトリに辞書が 置いてあることを想定していないので、変更箇所が多くなります。
NEmacsのWnnに関する設定は、NEMACS/lisp/eggrc-v4で行なっています。この ファイルを変更します。まず必要なのは、システム辞書ディレクトリの設定の 変更です。デフォルトでは
(set-default-sys-dic-directory "/usr/local/lib/wnn/dic/pubdic/")
となっているところを
(set-default-sys-dic-directory "/usr/local/lib/wnn/dic/")
と変更します。この結果、pubdicなシステム辞書にアクセスができなくなって しまいますから、"pubdic/"を補ってあげます。つまり、
(setsysdic "kihon.dic" "kihon.frq" 5 t)
となっているところを
(setsysdic "pubdic/kihon.dic" "kihon.frq" 5 t)
のように変更します。同様の変更をすべてのsetsysdicについて行ないます。 そして最後に、
(setsysdic "aic/chibutsu.dic" "chibutsu.frq" 4 t)
という地球物理辞書のエントリを加えます。変更例を示しておきます。
これで設定ファイルの準備は完了です。
Muleでは、はじめから複数のディレクトリに辞書が置かれることが想定されて いるようなので、変更すべき箇所は少ないのですが、困ったことに変更すべき 場所を探すのが大変です。Wnnの設定はMULEDIR/lisp/eggrc-wnnというファイ ルに書いてあるのでこれを変更します。ところが、このファイルにはjserver 用の設定についてはWnn6用とWnn4用の設定が、さらにtserver, cserver, kserverに関する設定まで書いてあるので、非常に長いのです。
Wnn6を使っている場合は、iwanamiという単語を検索すれば、 辞書をロードする設定をしている場所を探すことができます。そのあたりに地 球物理辞書をロードする設定
(add-wnn-dict "aic/chibutsu.dic" (concat wnn-usr-dic-dir "/chibutsu.h") 5 nil t)
を加えて下さい。
Wnn4, FreeWnnでは、漢字変換は正変換と逆変換のための設 定をする部分が別々にあります。pubdicという単語を検索することで辞書をロー ドする設定の部分を探すことができますが、もう少し周囲に目を配って、そこ が正変換用の設定((set-wnn-reverse nil)となっている)か、逆変換用の設定 ((set-wnn-reverse t)となっている)かを確認する必要があります。ただ、必 要なことはどちらの変換も同じです。正変換・逆変換の両方に辞書のロードの 設定の場所に、地球物理辞書をロードする設定
(add-wnn-dict "aic/chibutsu.dic" (concat wnn-usr-dic-dir "/chibutsu.h") 4 nil t)
を都合2箇所加えて下さい。変更例を示し ておきます。この例では、Wnnはjserverのみしか使わないという前提で作って あります。また、Wnnの変換効率向上のため、よしだともこ必 殺パラメータを採用しています。
これで設定ファイルの準備は終りです。
いよいよ大詰めです。
まず、同梱のMakefileの中の設定を確認します。SunOS4.1.3で動作するような 設定になっていますから、自分のシステムのcat, cp, mkdir, chownのパスを まず確認してください。さらにWnnのユーティリティへのパス(WNNPATH)、辞書 のインストール先ディレクトリ(SYSDICDIR)、Wnnのオーナー(WNNUSR)を自分の マシンの設定に合わせてください。
ここまで済んだら、jserverを停止します。この操作は一般ユーザで可能です。
% /usr/local/bin/Wnn4/wnnkill
Wnn6を使っている人は、適宜Wnn4をWnn6に読み替えてください。
ここで、jserverに接続中のユーザがいるとwnnkillに失敗してしまいます。ユー ザがWnnの使用をやめるのを待つか、当該ユーザにお願いして、一時使用を中 止してもらいましょう。改めて、wnnkillを実行し、jserverを終了させてくだ さい。
これで準備ができましたので、rootになって辞書の作成を行ないます。
# make sysdic
これにより持ち主がwnnとなっている地球物理辞書が所定の場所にインストー ルされます。念のため、インストール先のディレクトリの中を確認しておきま しょう。続いて、jserverを再起動します。これは一般ユーザでも可能です。
% /usr/local/bin/Wnn4/jserver
以上で、システム辞書として組み込む場合の作業はすべて終了です。
個人辞書として使う場合は、セキュリティ的にやや怪しくなることを覚悟で使 うことになります。また、確認しなければならないことがシステム辞書として 組み込む場合よりも多くなります。
確認すべきことで一番重要なことは、jserverが動いているホストがどこにあ るかです。自分のアカウントのあるホストで動いているのであれば、特に問題 はありません。そうでない場合については、別途まとめ て議論します。とりあえず、jserverの動いているホストにアカントがあ るものとして話を進めます。
この作業はjserverの動いているホストで行ないます。
Wnnでは、個人の頻度ファイル等を特定のディレクトリに置いています。置き 方には2パターンあって、システムのディレクトリ(例えば /usr/local/lib/wnn/ja_JP/dic/usr/${USER})の場合と、個人のホームディレク トリの下(例えば${HOME}/Wnn)の場合があります。
新たに個人辞書を作成する場合は、これらのディレクトリに作成するのですが、 システムのディレクトリは、多くの場合jserverのオーナー(おそらくwnn)にの み書き込み権限があって、一般ユーザが書き込むことができません。もし、自 分に書き込みの権限があったり、あとから説明するatodというコマンドがwnn にSetUIDビットが立てられていたりすると、このディレクトリに辞書を作成す ることができますが、これは例外中の例外でしょう。
そんなわけで、自分のホームディレクトリに辞書を置くためのディレクトリを 作る方向で考えなければなりません。ここで問題となるのが、ディレクトリの パミッションです。このディレクトリにはjserverがファイルを作成しようと するので、wnnに対して書き込みの権限を与える必要があります。多くの場合、 wnnと同じグループに属していたりはしないでしょうから、"other"に対して書 き込みを許す設定が必要になります。これがいやな場合は、管理人さんに頼ん で、ディレクトリのオーナーかグループをしかるべきものに変更してもらって ください。
SystemV系のOSの場合、自分のファイルを他人に譲渡する形のオーナー変更が できたりするので、この機能を使うと少しうれしいかも知れません。ただし、 作業の最後の段階で譲渡しないと、先の作業ができなくなってしまうので注意 が必要です。もし、システムがACL(Access Control List)をサポートしている なら、これを使うのが幸せへの近道でしょう。
とりあえず、このような条件を満たすWnnという名前のディレクトリをホーム ディレクトリに作ることにしましょう。このディレクトリに、システムのディ レクトリにある自分の頻度ファイルや個人用登録可能辞書などをコピーしてき ます。そのあと、辞書ファイルの整合性を確保するため、wnntouchというコマ ンドを使います。wnntouchは、/usr/local/bin/Wnn4/wnntouch(またはそれに 類するパス)にあります。ここまでの作業をまとめると、
% cd ${HOME} % mkdir Wnn % cp /usr/local/lib/wnn/ja_JP/dic/usr/${USER}/* Wnn % /usr/local/bin/Wnn4/wnntouch Wnn/*
となります。(ユーザー辞書の置き場所は適当に読み替えてください)
この作業は、jserverを利用する可能性のあるホストのすべてで行なう必要が あります。もし、ホームディレクトリが共有されているなら1箇所でやれば済 みますが。
NEmacs, Muleで地球物理辞書を使えるようにするために、自分専用の環境設定 を準備する必要があります。たまご関係の設定は、${HOME}/.eggrcというファ イルで行ないます。このファイルがない場合はシステムのデフォルトの設定が 使われます。
もし、すでにこのファイルを持っている場合は、作業1で個人ディレクトリを 移動しているので、このための設定をする必要があります。後述するサンプル ファイルを参考に変更してください。また、次のような辞書をロードする設定 を書き加える必要があります。
Muleをフロントエンドとして使う場合は、
(add-wnn-dict (concat wnn-usr-dic-dir "/chibutsu.dic") "" 5 t t)
を適当なところに書き加えます。Wnn4を使っていて、かつ逆変換も有効にして いる場合には書き加える場所が正変換用と逆変換用の2箇所になりますから注 意してください。
また、NEmacsをフロントエンドとして使う場合は、
(setusrdic "chibutsu.dic" 4 t )
を適当な場所に書き加えてください。
${HOME}/.eggrcなんていうファイルは知らないという場合は、この設定ファイ ルのサンプルを準備してありますので、 これを適当に編集して使ってください。この手順どおりの作業をしているなら ば、ほとんどの場合、システム辞書の置き場所を確認して必要であれば変更を 加えるだけで十分なはずです。
新しい設定は、NEmacs/Muleを再起動すると有効となります。
この作業はjserverが動いているホストで行ないます。
いよいよ辞書を作成します。同梱のMakefileのCAT, WNNPATH, DICDIRの設定を 自分のシステムに合わせて設定してください。これができたら、
% make private
を実行します。これにより作成した自分のユーザー辞書ディレクトリに地球物 理辞書が作成されたはずです。
以上で、個人用辞書を作成する手順は終りです。
これはかなりの茨の道です。というわけで、初心者はこの時点であきらめましょ う。自分がある程度のスキルがあるという自信がある人むけに解説します。と いうわけで、わかる人にしかわからない表現がたくさん出てくることにご容赦 下さい。
クリアしなければならない問題があります。最大のものは、Wnnの辞書等をつ くるためのコマンドがシステムにない可能性があるということです。この場合 は、Wnn4.2なりFreeWnnなりをしかるべき場所から入手する必要があります。 使っているXがX11R6以降であればこれらのコンパイルは簡単ですが、X11R5の 場合は、もはやX11R5のソースツリーを入手するのはかなり困難なので、Wnnの ソースツリーに少し細工をしてコンパイルする必要があります。少しくらい細 工をしたところで、xwnmoやuumのコンパイルはおそらくうまくいきませんが、 この作業で必要なのはWnnの辞書ユーティリティーだけなので、それらだけを コンパイルするように設定すれば、実質的にはXと関係がないのでコンパイル はできるはずです。
もう1つの問題は、Wnnのためのフロントエンドの問題です。jserverの動いて いないホスト上にある辞書ファイルを変換に利用できるのは、わたしたちの知 る範囲ではMule上のたかな版たまごだけです。というわけで、Mule ver2以降 が入っていない場合はMuleを入れ替えましょう。
これだけ準備をすれば、後は簡単です。.eggrc中のadd-dictの引数の解釈では、 "/"で始まっているものはjserverが動いているホストでのフルパス、そうでな いときはjserverが動いているホストの/usr/local/lib/wnn/ja_JP/dicからの 相対パスと解釈されるというのが基本です。ただし、"!/"で始まっている場合 は、ローカルホストでのフルパスとして解釈されます。この機能を使えばきっ とうまくいくことでしょう。ただ、辞書をロードするのがちょっと遅そうです が。
実は、私たちも試していないので「絶対うまくいく」とは言い切れません。も うしわけないです。
まじめな話、数年前だったらjserverのような実メモリを大量に消費するプロ セスを動かしておくような余裕のあるマシンはわずかでしたが、いまどきだっ たら、PC-UNIXの動いているようなパソコンでもそのくらいのメモリの余裕が ありますし、それぞれのマシンで動かしてしまった方がなんぼか設定が楽とい うものです。
あ゛あ゛。そうすると今度は管理の手間が・・・。
Wnnのことで困ったら、http://www.tomo.gr.jp/wnn/を見る に限ります。これよりも詳しい情報はまず他では手に入りません。
本ページでも多くの部分で参考にさせて頂きました。
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